島根県警の捜査に協力する嘱託警察犬が3匹増えて9匹となり、長年の減少傾向に歯止めがかかるか期待される。警察犬訓練士の資格を持つ若手の指導手(飼い主)が現れたため。嘱託犬不在の地域もあり、まだ十分とは言えないものの、関係者は裾野の広がりを喜ぶ。(古瀬弘治)
警察犬は、足跡や遺留品のにおいを頼りに犯人や行方不明者などを捜す「鼻の捜査官」。県警が飼う直轄犬2匹に加え、年1回の審査会で合格した民間の嘱託犬が任に就く。2020年は直轄犬と嘱託犬を合わせ、出動件数73件。ほとんどが行方不明者の捜索だった。
嘱託犬はピークの08年度には15匹いたが近年、指導手の高齢化と、なり手不足に直面。10年度に10匹に減り、20年度は6匹にまで減った。直轄犬がいない鳥取県警も同様に嘱託犬は減少傾向にあり現在、8匹だ。
犬好きから指導手になり20年以上たつ島根県警嘱託犬指導手会の〓(山ヘンに買の貝が幸)田(えきだ)直樹会長(72)=益田市横田町=は「私が指導手になった当初は大型犬ブームもあり指導手が大勢いたが、徐々に減り、高齢化も進み、多くの人が引退した」と説く。
明るい兆しは訓練士の資格を持つ若い指導手が出てきたことだ。同県邑南町矢上の西川翔さん(29)もその一人。20年6月に滋賀県からUターンし、愛犬2匹が嘱託犬の審査会で合格した。「地元に貢献できる」と地域を守る活動に意欲を新たにする。
今春、合格した嘱託犬9匹を地域別にみると、松江市1匹、安来市2匹、大田市1匹、益田市3匹、邑南町2匹。
県警鑑識課の田尻真理次長は「増えたのはうれしいが、嘱託犬がいない地域もまだある。嘱託犬が増えることで、それぞれの負担軽減にもつながり、捜査にもプラスの影響が出る」とし、今後も協力の呼び掛けを続ける考え。〓(山ヘンに買の貝が幸)田会長も「高齢者が増え、出動の機会も増えている。若い人が指導手になれば、裾野が広がる」と期待する。