新型コロナウイルスの感染症法上の扱いが「5類」に引き下げられて3週間。街では「マスクなし」姿の人も増えてきた。コロナが終息したわけではない。ただ、生活の制限が緩和されたようで開放感が漂う▼コロナも悪いことばかりではない。リモートワークが普及し、山陰など地方への移住者が増加。東京と島根の2カ所で生活拠点を構える人も出てきた。新しい生活様式が広がっている▼こちらも地方移住だと思っていたが、実際は2拠点生活だったようだ。中央省庁として初めて東京・霞が関から京都市へ「地方移転」した文化庁。3月下旬から移転作業が進み、15日に本格稼働した▼とはいえ、全13部署のうち京都に移ったのは6部署。残りは国会対応などを考慮し東京に残る。全職員約590人のうち京都を拠点とするのは約390人。ただし、国会議員への政策説明などで、頻繁に東京への出張を強いられることもあるらしい。文化庁は実際に京都に住居を移した職員数を明らかにしていない▼政府機関の地方移転は、東京一極集中是正を目指す地方創生政策の一環で安倍晋三政権が2014年に打ち出したが、官僚の抵抗で頓挫状態。理由は、他省庁との予算折衝や国会議員への政策説明のような対面業務が必要だからという。なぜリモートで効率的にできないのか-。このままでは一極集中の是正は、コロナの終息よりも先が見えない。(健)