テレビや新聞、スマートフォンで天気予報を確認しない日はない。週末にかけて台風と前線の影響で、局地的な豪雨をもたらす線状降水帯が各地で発生。広い範囲で大雨に見舞われた。毎日の生活に欠かせない天気予報はそんなとき、早めの避難にも役立つ▼この天気予報にいち早く目を付けたのが『学問のすゝめ』で知られる福沢諭吉だそうだ。日本で天気予報が始まったのは1884年6月。新聞で最初に天気欄を設けたのが福沢が82年に創刊した「時事新報」だった▼福沢は、まだ予報がなかった時代に天気の掲載を始め、88年に24時間先までの予報になると真っ先に対応。93年からは一目で分かるようにイラスト付きにした▼今思えば、さすがに先見の明があったと思う。それだけではない。福沢には天気欄を始めることで「日本人の小胆近視という悪い癖がなくなるだろう」との思いがあったという。小胆近視とは度量が狭く先を見ないという意味だ▼1925年にはラジオでも天気予報が始まったものの、太平洋戦争中は機密事項とされた。本紙の前身「山陰新聞」「島根新聞」にも41年12月9日から終戦10日後までは掲載がない。その後、天気予報は格段に進歩したが、日本人の方はどうか。福沢が懸念した「悪い癖」が出ないように、目先の損得ばかりでなく先々のリスクもきちんと考えたい。早めの避難と同じで、後悔先に立たずだ。(己)