13日午前、鳥取県東部を中心に降った記録的な大雨は前夜時点では予想されておらず、住民や自治体は「こんなに降るとは思わなかった」と困惑しながら状況を見守った。梅雨前線による豪雨は予測が難しく、県や気象台は気象状況を注視し、早めに行動に移す意識の重要性を訴える。
鳥取市福部町では13日午前、町中心部を流れる箭渓(やだに)川の水位が一気に上がり、周囲の道路や田んぼに褐色の水があふれた。膝下まで水につかりながら歩いていた団体職員の50代女性は、気象予報に反した豪雨に「ここまで降るとは思っていなかった」と驚きを隠せない様子で話した。
鳥取県岩美町では土砂崩れが発生。同町大谷の龍岩寺近くにある町道ののり面が高さ5メートル、幅5メートルにわたって崩れた。谷上元康住職(54)は「さらに石が落ちて来ないか心配だ」と不安そうに語った。
鳥取市の中心街にある鳥取生協病院では地下のポンプ室が浸水し、院内の水道が使えなくなった。職員が給水車の水をポリ袋で各病棟に運び対応。入院患者の水分補給は備蓄飲料水を、透析患者9人の治療には貯水槽などの水を使用してしのいだ。14日には復旧する見通しだが、同病院の安田昌文事務長は「浸水は初めての経験で、十分な準備ができていなかった。今後も起こりうるので対応を検討しないといけない」と気を引き締めた。
鳥取地方気象台によると12日時点、13日の鳥取県内の1時間降水量は多いところで25ミリ、24時間降水量は75ミリと予想。ところが、13日は午前7時10分までの1時間で鳥取市気高付近の解析雨量が約90ミリとなり「記録的短時間大雨情報」を発表。結果的に予報が外れる形に。自治体も対応に戸惑いを隠せず、鳥取市危機管理課の北村誠太郎課長補佐は「正直、予想できておらず驚いている。状況を追いかけていくしかない」と吐露した。
松江、鳥取両地方気象台によると、近年の温暖化にで海面の水温が上昇。水蒸気が大気に多く供給されやすくなっているという。そこに寒気が流れ込むことで雲が発達しやすい環境にあるが、現行の観測システムでは予測が難しいという。また、停滞する梅雨前線が少しでもずれれば、降水エリアも予測より大きく変わるという。
両地方気象台の担当者は「天気の予測は日々変わる。気象台や自治体の情報を随時確認してほしい」と促し、鳥取県危機対策・情報課の灘尾幸三課長は「これまでの経験は通用しない。最新の情報を入手し、早めに行動してほしい」と呼びかけた。
(原暁、福間崇広、岸本久瑠人)