「ウルトラマン」シリーズの初期に脚本を手掛けた沖縄県出身の金城哲夫さん(1938~76年)の作品は現代にも通じる社会性を帯びている。太平洋戦争末期の沖縄戦を6歳で体験。そのせいか平和への願いが強くにじむ▼先日、NHKBSプレミアムで放送された「ウルトラセブン」の第8話「狙われた街」もその一つ。オレンジ色の顔が特徴のメトロン星人が地球征服を企(たくら)み、人間の信頼関係を壊すため自動販売機のたばこに麻薬成分を混入。それを吸ったウルトラ警備隊員が突然暴れ出すという内容▼あっさりセブンに倒されるのだが、最後のナレーションが胸に響く。<人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙人です。でもご安心ください。このお話は遠い遠い未来の物語なのです。なぜですって。われわれ人類は今、宇宙人に狙われるほどお互いを信頼していませんから>▼最初の放送から50年以上たつが、宇宙人に狙われるほど強固な信頼を築けているだろうか。世界を見ると、広がる経済格差に激化する人種間対立…。国内では会員制交流サイト(SNS)での誹謗(ひぼう)中傷が相次ぎ、信頼構築は程遠い▼金城さんがつらい体験をした沖縄は、来年5月に本土復帰50年の節目を迎える。だが、米軍基地は集中したままで、尖閣諸島や台湾を巡る軍事衝突が起きれば戦闘に巻き込まれかねない。こんな状況ではメトロン星人もお手上げだろう。(健)