笑顔で異形矢印を指さす「りん」こと山﨑賀功さん。近場の矢印の位置は全て把握している=松江市寺町
笑顔で異形矢印を指さす「りん」こと山﨑賀功さん。近場の矢印の位置は全て把握している=松江市寺町

 道を歩いている時や車の運転中、道ばたでよく見かける、交通安全のための道路標識。「一方通行」「指定方向外進行禁止」などいろいろな種類がある。実は道路や交差点の形によって変わった標識が多く存在する。矢印が入り乱れていたり、傾いていたり…。松江市の大学生が、この変わった珍しい標識を撮影し、会員制交流サイト(SNS)で公開したところ、全国から人気を集めているという。大学生に面白い標識の世界について聞いた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 

写真説明:静岡県にある異形矢印。意味はわかるものの、初見は思わず二度見してしまいそうだ。

 この写真を見ていただきたい。3本の矢印が入り乱れ、中央の矢印の側面からはさらに2本の通路が突き出すー。これは静岡県に実在する標識だが、一目見ただけで異質な雰囲気が感じ取れる。

 「なんだこの面白い形は!? と思わず笑ってしまった」。撮影したのは、インターネット上で「りん」の名前で活動する、島根大2年生、山﨑賀功さん(19)。高校生の頃、目にして、変わった標識の世界に引き込まれるきっかけになった思い出の一枚だという。山﨑さんはこの変わった交通標識を「異形矢印」と名付け、活動する。「標識それぞれに個性がある。キャラクターみたいでかっこいい」と目を輝かせる。

 

▼コレクションは1700種類以上

 山﨑さんは静岡県出身。標識に注ぐ情熱は並大抵のものではなく、新型コロナ禍以前は、標識の撮影だけのために泊まりがけでたびたび県外遠征をするほど。これまで25府県で1700種類以上の交通標識を写真に収め、ツイッターやホームページ「道路標識めぐりの旅」で公開している。

 2021年5月末現在でツイッターはフォロワー1187人、ホームページは訪問者1万7500人。ホームページでは、都道府県別の変わった交通標識がまとめられているほか、特に変な形の矢印を集めたランキング(写真2)を掲載している。ウエブニュース「ABEMA NEWS」にツイッターとホームページが取り上げられるなど注目されており、「いろいろな人に見てもらうため自分なりに工夫しています」と笑う。

写真説明:山﨑さんのホームページ「道路標識めぐりの旅」に掲載されている異形矢印ランキング。急角度部門、シンメトリー部門など多彩だ。

 

▼矢印にも地域性?

 山﨑さんによると、変わった矢印標識の最大の魅力は「その地域だけの特徴があること」だという。

 矢印標識は正式には「指定方向外進行禁止」と呼ばれる、規制標識の一種だ。この標識の設置や撤去の決定権を持つのは各都道府県の公安委員会。各警察本部の交通規制課が地域の交通事情に合わせて公安委員会に申し出て、委員会が了承すると設置や撤去が決まる。

 矢印の形状は、警察庁によりある程度基準が決められている。ただ、島根県警交通規制課の西坂洋美管理官によると「現地の道路形状が基準とそぐわず分かりにくい場合、形状に合わせた矢印を作ることもある」という。つまり、各警察本部の裁量で、時たま珍しい矢印の標識が生まれるということだ。地域に合わせて特別に作られた唯一無二の矢印標識なのだ。

 例えば徳島県では、進行禁止の標識の中に、さらに進入禁止の標識が組み込まれている。佐賀県では標識内に線路の記述があるなど、全国でその地域にしかない形式の矢印が多数あり、山﨑さんは「そこでしか撮れないというレア要素に愛好家として引かれる」という。

 島根県には3本の矢印が美しく交差する標識、鳥取県には直角に交差した2本の矢印の交差箇所からさらにもう1本矢印が飛び出している標識がある。「ここにしかない」という「プレミア感」にコレクター心がくすぐられるのだろう。

写真説明:左上から徳島、佐賀、島根、鳥取の異形矢印。確かに、どれも他には無さそうな個性をこれでもかと醸し出している。(「道路標識めぐりの旅」より転載)