62年ぶりに倉吉市で行われた大綱引き「じんしょ」で懸命に綱を引く東軍=倉吉市明治町、明治町交差点
62年ぶりに倉吉市で行われた大綱引き「じんしょ」で懸命に綱を引く東軍=倉吉市明治町、明治町交差点

 鳥取県中部の夏の風物詩「倉吉打吹まつり」が5日、倉吉市の中心市街地、倉吉銀座商店街や白壁土蔵群周辺で開かれた。今年は倉吉市が市制に移行して70年の節目の年でもあり、記念事業として大綱引き「じんしょ」が62年ぶりに開催されるなど大きな盛り上がりを見せた。

 打吹まつりは官民でつくる実行委員会が主催する夏祭りとして毎年、市民を楽しませていたが、コロナ禍により2020年と21年は中止、22年は花火大会のみの開催を余儀なくされるなど厳しい状況に置かれていた。

 今年は4年ぶりに2日間開催。本部が置かれた同市堺町2丁目の市役所第2庁舎や周辺施設の駐車場に多くの出店が並び、市内外から訪れた人々が笑顔で久々の祭りを楽しんだ。

 初日の目玉、じんしょは約2トンのかずらを編んで作った雌雄一対の綱を持ち上げて空中で結合し、全長約40メートルになった大綱を東西約100人が二手に分かれて引き合う迫力の行事。

 使用する綱は5日午前8時から実行委員らを中心に集まった有志が約9時間かけて編み上げた。大綱引きの伝統が残る三朝町から招いた町民の指導の下、結合の要となる「壷口(つぼぐち)」と呼ばれる輪を作り、綱の芯となる木々を差し込んで固定しかずらを次々と編み込んで巨大な綱を作り上げた。

 午後6時、明治町交差点を中心に東西に向かって2本の大綱が設置された。多くの見物客が見守る中、両綱が持ち上げられ、綱の先端を制御しながら一方の壷口にもう一方を差し込んで見事に結合させた。結合後、広田一恭市長の合図とともに綱引きが始まり、開始と同時に優位を奪った東側が勝利した。

 綱引きは飛び入り参加も歓迎し、多くの見物人が一体となって地域の伝統行事を再現した。両親の古里に帰省して偶然祭りに訪れた奈良県天理市の大学生、今田竜哉さん(22)は「62年ぶりの貴重な機会に立ち会うことができ、良い思い出になった」と満足そうに語った。

 打吹まつりは6日も開催。同市見日(みるか)町の飛天夢広場に会場を移し、午後8時半からは約5千発の打ち上げ花火が祭りを締めくくる。 (吉金亮太)