松江歴史館=松江市殿町
松江歴史館=松江市殿町
島根県物産観光館=松江市殿町
島根県物産観光館=松江市殿町
松江歴史館=松江市殿町
島根県物産観光館=松江市殿町

 松江城下に立つ松江歴史館と島根県物産観光館。およそ100メートルの近距離にある二つの施設の屋根瓦は似ているようで実は違う。歴史館は釉薬(ゆうやく)を使わない他県産のいぶし瓦、物産館はいぶし色の釉薬を使った石州瓦。見分けられる方は、よほどの瓦通である▼違いはまだある。瓦は一般的に、水平に見ると「へ」の字のように右が下がる波形で、左側の山になった部分をかぶせ重ねる。ところが、歴史館の瓦をよく見ると、一枚一枚が逆の左下がりだ▼「左桟いぶし瓦」と呼ばれるこの瓦は、かつて出雲大津や松江の秋鹿、古江などで作られ、昭和の末頃に廃れたと伝わる。城下町の武家屋敷や町家にも広く使われたことから歴史館の屋根は再現性にこだわり、県外にある、いぶし瓦メーカーの特注品を採用した。建築当時は県内産の石州瓦で代替できないものか、と激しい論争が起きたと聞く▼左桟瓦で葺(ふ)いた屋根は、高知県などの一部に見られるほどで全国的に珍しい。松江や出雲の街にはまだあちこちに残るから貴重だ。葺き替えられた石州瓦との対比もできる。出雲地方特有の風向が関係しているとか、諸説ある「左の理由」をあれこれ考えながら、探し歩いてみてはどうだろう▼日差しが強ければ、大きく張り出した軒下の陰で涼を取ればいい。雨雪だけでなく、熱を遮る役割もあるから。いつもより少し目線を上げて。きょう八月八日は屋根の日。(史)