▽短歌 宮里勝子選

 さがしものこの机にし違いない引けどたたけど開かぬ引き出し   松 江 須山 吉雄

  【評】ごくささいな日常のひとこまだけど立派な歌。簡潔にして思いは深い。押しても引いても動かない引き出しにいらだつさまが伝わる。助詞のしが働き、探す物までは言わずもがな。

手を引いて水郷祭の花火見し息子が今日は孫の手を引き      松 江 新井 千慧

  【評】孫の手をひき水郷祭の花火大会に向かう息子さんに、若き日の自分を重ねて見ている。子や孫の成長は自身の老いにつながり、安堵...