ライオンや虎と混同しているのか、「肉を与えないのか」とよく質問されるという。のぼりべつクマ牧場(北海道登別市)の吉見優飼育員(29)のヒグマ談。74頭がいる。餌は牛用の配合飼料中心で草食獣と変わらない▼野生のヒグマもサケをくわえる木彫りのイメージがあるが、ほとんどが木の実や芽、果物を主に食べる。飼育牛66頭を襲ったとされる「OSO(オソ)18」や、食うために10人を殺傷した大正期の「三毛別ヒグマ事件」の個体は極めて異例。もともと肉に頼って生きているクマは北極圏域にすむシロクマのみだ▼本州で今年、人がツキノワグマに襲われるケースが相次ぐ。大半が鉢合わせで、クマも身を守ろうと攻撃する。大きさが倍はあり攻撃性も高いとされる北海道のヒグマはどうかと調べると、心根は同じだった。他を圧する巨体の割に臆病で警戒心が強い。クマからすれば、食うつもりもない人間との出合いは不幸と言うほかない▼17日早朝、浜田市内で新聞配達中の男性がツキノワグマに襲われ負傷した。クマは昼行性で里では人影の少ない朝夕に動くという。近くの柿の木から下りてきた。天気が悪く雨音で人に気付くのが遅れ、驚いたのだろうか▼「初めて見るもの、聞く音をすごく怖がる」と吉見飼育員。里近くにいて人を恐れないという都市型クマの存在も指摘されるが、クマとて居心地は悪い。凶暴なイメージ先行を恐れる。(板)