浜田漁港と日本海(4月撮影)
浜田漁港と日本海(4月撮影)

 野球場、陸上競技場や武道館などのスポーツ施設が駅前にあり、若者が集う国際短期大学(現島根県立大)に高齢者や障害者がよく利用する島根県の西部総合福祉センターが山の上にできてゆく。浜田市に勤務した25年前、公共施設の配置に疑問を感じていた。

 だが大学や福祉センターに取材で通ううち、県内の他市にはない、得難い場所だとも感じるようになった。

 道の駅「ゆうひパークはまだ」からほど展望が開けているわけではないが、この辺りから見える日本海は、北前船の寄港で栄えた海洋都市のスケールの大きさを想起させる。

 停滞していた市郷土資料館(浜田市黒川町)の移転計画が三たび動きだす。この高台の一角にある市世界こども美術館(同市野原町)との併設案も、選択肢の一つ。畳ケ浦をはじめとした大地の成り立ち、古代の石見国分寺、江戸時代の浜田城下の発展、石見神楽、長浜人形、石州半紙や浜田の近代を支えた人物伝…。子どもたちに伝えることは山のようにある。

 限られた予算と展示スペースで、ストーリーをどう組み立てるか。議論次第で、おのずと新生・資料館の「必要性」は判断できるのではないか。幸いにもこの四半世紀で築かれた山の上の文教地区には、知恵を持つ人材が全国から、世界から集まっている。できる、できないの結論は議会で出すにしても、夢のある議論をもう一度、期待せずにはいられない。(万)