街頭演説する自民党の石破茂元幹事長(中央)=20日午後、横浜市
街頭演説する自民党の石破茂元幹事長(中央)=20日午後、横浜市

 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑が政界を大きく揺るがしている。先日、支持率下落が止まらない岸田政権への風当たりの強さを直接、感じる場面があった。

 横浜市内の駅前であった街頭演説の取材。駆け付けた自民の石破茂元幹事長(衆院鳥取1区)の訴えに約300人が耳を傾けた。終盤に差しかかると、聴衆の後方から男性の声が飛んだ。「自民党はもう解体しろ」

 男性のやじは加速した。「裏金問題の本質を全然語っていないじゃないか」と石破氏本人にも向き、演説が終わって拍手する聴衆に対しては「拍手なんかするんじゃねえ」と怒鳴り上げた。

 警察官はやじを飛ばす男性の隣にいたものの、動かなかった。演説終了後、主催した地元衆院議員スタッフがなだめ、大きな混乱はなかった。

 2019年7月に札幌市であった安倍晋三元首相による参院選の応援演説が頭をよぎった。安倍氏に「辞めろ」「増税反対」と叫んだ若い男女2人が警察に排除された。山陰で上映はないが、事件を追ったドキュメンタリー映画『ヤジと民主主義』が公開中だ。もちろん、声を上げて政権に訴える「表現の自由」が法的根拠なく排除されてはならない。自民の議員は街頭に出て国民の声を聞くべきだが、暴力的な言葉が安倍氏銃撃のような悲劇につながるのも駄目だ。石破氏にSP(警護官)はいない。聴衆でごった返した駅前で懸念は募った。(吏)