山陰中央新報社は2023年の島根、鳥取両県の十大ニュースを選んだ。島根の1位は県内唯一のデパートとして、1958年の開店から65年親しまれた一畑百貨店(松江市朝日町)の閉店決定、2位は、政界をけん引してきた青木幹雄元自民党参院議員会長、細田博之前衆院議長の相次ぐ死去、3位は中国電力島根原発2号機の再稼働時期の公表だった。
鳥取の1位は、県内全てのJA系スーパーマーケットの閉店決定、2位は国際定期航空路線・米子-ソウル便の4年ぶりの運航再開、3位は鳥取県議会で相次いだ議員の不祥事問題だった。(記事中の年齢、役職はニュース掲載時のものです)
【島根】
<1位>一畑百貨店 閉店へ(6月)
島根県唯一のデパートとして、長く県民に親しまれた一畑百貨店(松江市朝日町)が、2024年1月14日の営業を最後に閉店することが決まった。6月13日に同百貨店が発表した。
一畑百貨店は、戦後の経済復興が進む1958年に松江市殿町にオープン。98年には、JR松江駅前の現店舗に移転した。
売上高は2002年3月期にピークの108億円を記録したものの、その後は商圏内に相次いでできた郊外型の大型店との競争激化や、商圏人口の減少などで業績が低迷。さらに、新型コロナウイルス禍が追い打ちとなった。
施設を所有する一畑電気鉄道(松江市中原町)が後継のテナント誘致を検討している。
【6月14日付】一畑百貨店閉店へ 来年1月14日 経営不振で 松江
<2位>青木幹雄、細田博之両氏死去(6、11月)
青木幹雄元自民党参院議員会長が6月11日に89歳で、細田博之前衆院議長は11月10日に79歳で相次いで死去し、一時代を築いた島根の大物政治家が鬼籍に入った。
出雲市大社町出身の青木氏は、竹下登氏の秘書、島根県議を経て1986年の参院選で初当選し、連続4期24年務めた。小渕、森内閣で官房長官、小泉政権下では自民党参院議員会長を務めるなどキーパーソンとして政局を動かした。
松江市出身の細田氏は通産官僚、自民党総務会長などを務めた衆院議員の父・吉蔵氏の秘書を経て90年衆院選で初当選。2021年まで、11回連続当選し、官房長官や党幹事長など要職を歴任した。体調不良のため衆院議長を辞任した直後に現職のまま死去。衆院島根1区補欠選挙が24年4月に実施される見通し。
【6月13日付】青木幹雄氏が死去 元官房長官 「参院のドン」 89歳
<3位>島根原発2号機 来年8月再稼働へ(9月)
中国電力が9月、島根原発2号機(松江市鹿島町片句、82万キロワット)を巡り、2024年8月の再稼働を目指すと表明した。定期検査入りして停止した12年1月以来、12年7カ月ぶりに県都の原発が稼働する見通しとなった。東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえた安全対策工事は、24年5月に完了する予定。原子力規制委員会による三つの審査は、原発の運用体制のルールを定めた「保安規定」が残っている。
また、廃炉作業中の1号機は、当初45年度とした廃炉完了の時期を4年延長する計画を発表した。立地自治体の島根県、松江市の地元同意手続きが完了し、規制委に認可申請した。
【9月12日付】島根原発2号機が24年8月再稼働 中電発表、12年7カ月ぶり
<4位>JR木次線トロッコ列車 「奥出雲おろち号」運行終了(11月)
四半世紀にわたりJR木次線を走ったトロッコ列車・奥出雲おろち号が11月23日、運行を終えた。
ガラス窓のない開放的なトロッコ車、控車(客車)、ディーゼル機関車の3両編成。1998年4月、木次―備後落合間を往復するルートで運行を始めた。急勾配で進行方向を変えながら登る「3段式スイッチバック」といった魅力もあり人気だったが、車両の老朽化でJR西日本が廃止を決定。2022年度までに約34万人、最終の23年度には2万1千人が中国山地の旅を楽しんだ。
木次線には24年4月、観光列車・あめつちが乗り入れる。
【11月24日付】奥出雲おろち号がラストラン 26年の歴史に幕 JR木次線
<5位>一畑バス、松江市営バス 運転手不足で減便(通年)
深刻な運転手不足を理由に、山陰両県の路線バスで減便や廃止の動きが相次いだ。一畑バスが8、10月に7路線を減便したほか、松江市内発着の4路線を2024年9月末で廃止する方針を表明。松江市交通局も23年10月から4路線の本数を見直し、来春には大規模な路線系統の再編に着手する。
24年4月に適用される運転手の労働時間基準改正で、年間の勤務時間の上限が80時間減の3300時間となる。増員がなければ既存の運行体系維持は困難となるが、事業者は厳しい経営を強いられており、地域公共交通の衰退への懸念が増大している。
【12月13日付】バス・タクシー運転手がいない 山陰の現場から 影響 廃止、減便、生活の足奪う
<6位>松江署長がセクハラ 事実上の更迭(3月)
複数の女性職員に対しセクハラに該当する不適切な発言があったとして、島根県警が当時の松江署長=警視正=を本部長訓戒の監督上の措置にした。
県警監察課によると、署長は2022年4月から23年2月までの間、執務中に複数の女性職員に対し、容姿や体形、プライバシーに関する不適切な発言を繰り返したとされる。
事実関係を認め「嫌な思いをした職員に大変申し訳なく思っている」と話したという。
この署長は、警視正のまま、近畿管区警察学校に異動となった。
【3月3日付】松江署長 セクハラで訓戒 女性職員に不適切発言 県警
<7位>丸山知事再選(4月)
任期満了に伴い、4月9日に投開票され島根県知事選は、現職の丸山達也氏(53)が共産党、諸派の新人を破り、再選を果たした。自民、立憲民主、公明、国民民主4党などが推した丸山氏の得票率は86.27%だった。投票率は54.96%で、保守分裂の激戦となった2019年の前回選を7.08ポイント下回った。
県議選では、松江選挙区(定数11)で定数2超の激戦となり、20~40代の男女新人4人が全員当選した。SNS(交流サイト)を駆使しながら、幅広い層へ支持を広げ、世代交代を強く印象付けた。
【4月10日付】島根知事選 丸山氏 与野党相乗り盤石 人口減対策「重責痛感」
<8位>松江水郷祭花火大会 有料観覧席増で賛否(8月)
8月5、6日の松江水郷祭花火大会で、昨年の約10倍に当たる計2万6千席の有料観覧席を巡り、市民の賛否が分かれた。資材費や人件費が高騰する中で有料席の増加は全国的な動きである一方、料金設定や観覧方法に課題を残した。
1人6千円からの指定席が完売したものの、エリア内で席取りをする必要がある1人5500円のブロック席の4割が売れ残った。事業収入は計画段階の1億3790万円に対し、8913万円。主催者の水郷祭推進会議は、計画で5千万円とした企業などからの協賛金を、倍近く集めて賄うとした。
【8月8日付】松江水郷祭の花火、有料観覧席に市民賛否 料金や範囲、見直し求める声
<9位>彫刻家 澄川喜一氏死去(4月)
島根県吉賀町出身の彫刻家で、東京スカイツリーのデザインを監修した元東京芸術大学学長・澄川喜一氏が4月9日に91歳で死去した。文化勲章受章者。
「そりのあるかたち」シリーズをはじめ、日本の伝統に根差した作風で、彫刻界を長くけん引した。
地元では益田市有明町の県芸術文化センター・グラントワのセンター長を、開館時の2005年4月から22年6月まで務めた。グラントワや澄川氏が手がけたモニュメントがある県立大浜田キャンパスでの追悼イベントなど功績をしのぶ動きが各地で続いた。
【6月22日付】澄川喜一さん死去 吉賀出身 彫刻家、文化勲章 91歳
<10位>クマ、シカの人的被害相次ぐ(通年)
島根県内のツキノワグマの目撃件数は、2023年11月末時点で前年度同期を310件上回る891件となった。過去10年間でも3番目に多い。6月には邑南町の70代男性が右目を負傷する重傷を負い、11月には浜田市金城町の30代男性が左肩など2カ所をひっかかれる被害に遭った。餌となるドングリの凶作が原因とみられる。
ニホンジカも、元々は島根半島に限られていた生息域が、中国山地などで拡大を続け、ヒノキなどに被害が出ている。22年度の捕獲数は、過去最多の855頭。
【10月27日付】島根クマ目撃、大幅増580件 餌凶作で冬眠前要注意 西部8割、半年で前年度迫る
【鳥取】
<1位>JA系スーパー閉店相次ぐ(通年)
農業県・鳥取県内で展開していたJA系スーパー全17店舗が、業績不振などを理由に閉店することが決まった。県内企業が後継店をオープンさせるなど、承継の動きがある一方、交渉中や利活用策が決まっていない店舗もあり、高齢者を中心とした買い物環境の維持が課題として浮上。県や立地市町も、支援策を強化した。
17店舗のうち、JA鳥取いなば(鳥取市)が運営する「トスク」は9店舗が9月末までに閉店。JA鳥取中央(倉吉市)のAコープ4店舗は、3店舗が9月に閉店し、残る1店も来年3月に閉店する。JA鳥取西部(米子市)のAコープ4店舗は、来年1月に閉店予定。後継企業が営業を始めたか、または決定しているのは計6店舗。
【2月16日付】鳥取中部 全Aコープ閉店 4店、赤字続き 23年度中に
【10月1日付】鳥取のトスク全9店が閉店 4店引き継ぎ交渉中 歴史55年に幕
【11月3日】来年1月15、22日閉店 鳥取西部のAコープ4店
<2位>米子ソウル便、4年ぶり運航再開(10月)
米子空港(境港市佐斐神町)と、韓国・仁川(インチョン)国際空港を結ぶ韓国の格安航空会社「エアソウル」の国際定期航空路線が10月25日、4年ぶりに運航を再開した。
歴史問題などを背景とした日韓関係の悪化や、新型コロナウイルス禍の影響で休止していた同路線は、運休前の週6往復便の半分の週3往復で復活。再開後の初便で来日し、米子空港に降り立ったエアソウルの趙鎭滿(チョジンマン)代表理事は「デーリー(毎日)運航まで増便できると思う」と意欲を示した。
注目された搭乗率は、10月(運航3日間)の89.6%に続き、11月も87.2%と高水準を維持。順調な滑り出しとなった。
【11月26日付】米子ソウル便が4年ぶり再開 週3往復、到着第1便は満席
<3位>県議会で不祥事相次ぐ 初の政治倫理審査会(通年)
4月の県議選以降、3議員の不祥事が相次いで発覚する異常事態となった。県議会は2013年の条例制定後、初めて「政治倫理審査会」を設置し、対応を議論した。
3人は、当選直後に詐欺などの疑いで逮捕、起訴されて実刑判決が確定し、議員辞職した平井伸治元議員、公職選挙法違反(寄付行為)の罪で略式命令を受けた藤縄喜和議員、県議同士でつくるゴルフ同好会の費用の私的流用や、政務活動費の不適切な使用が指摘された松田正議員。
政倫審は藤縄、松田両議員への議員辞職勧告が妥当と結論付け、本会議で議員辞職勧告決議案が可決された。ただ、法的拘束力はなく、両議員とも議員活動を継続している。
【12月17日付】透ける身内意識 対応後手に 公選法違反、助成金詐欺、業務上横領疑い 不祥事相次ぐ鳥取県議会 県政史上初の政倫審設置
<4位>24時間テレビの寄付金着服 局長を懲戒解雇(11月)
日本テレビ系列の日本海テレビの経営戦略局長が、看板のチャリティー番組「24時間テレビ」の寄付金と、会社の売上金などの資金総額約1118万円を着服していたことが分かった。同社は局長を懲戒解雇。田口晃也会長が引責辞任し、西嶌(にしじま)一泰社長が報酬3カ月分を全額返上すると発表した。
元局長は2014~20、23年に24時間テレビに寄せられた寄付金のうち約265万円を着服した。募金終了後に本社内の金庫で保管していた一部を持ち出したという。売上金などの資金は14年6月~21年3月に計約854万円を着服した。
【11月29日付】24時間テレビ寄付金など着服 1118万円 日本海テレビ元局長 懲戒解雇 会長、引責辞任の意向
<5位>がいなロード開通(7月)
JR米子駅(米子市弥生町)の南北自由通路「がいなロード」が7月29日、新駅舎や駅ビルの開業とともに開通した。改札口がある2階から線路をまたいで延びる全長140メートルの歩行者用通路で、道幅6メートル、延べ床面積2千平方メートル。天井や壁に智頭杉を使用し、中央部には列車の展望スペースを設けた。総事業費は76億6千万円。
線路や車両基地などで分断されていた駅の南北がつながり、市民生活の利便性の向上が期待されるとともに、米子市は「歩いて楽しいまちづくり」のシンボルとして、にぎわい創出に活用する。
【7月30日付】がいなロード開通 市民、声を弾ませ初歩き 新たな米子の顔誕生喜ぶ
<6位>鳥取で記録的大雨 19万人緊急安全確保(8月)
台風7号の縦断に伴い鳥取県東部を中心に大雨が降り、8月15日の朝に線状降水帯が発生した。気象庁は同日、鳥取市に大雨特別警報を発表し、同市と琴浦町の全域、八頭町の一部の計約8万8900世帯、約19万9千人に、最も高いレベル5の「緊急安全確保」を出した。
生活を支えるインフラもダメージを受けた。鳥取市佐治町では佐治川に架かる高山橋の一部が崩落。国道482号が通行止めとなったため、町内の千人超が一時孤立した。同町では、1日で8月平年値の3倍に迫る降水量となる515.0ミリを記録した。
【8月16日付】台風 鳥取で記録的大雨 19万人に緊急安全確保 線状降水帯
<7位>上田死刑囚が死亡(1月)
2009年に起きた鳥取連続不審死事件で男性2人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した元スナック従業員上田美由紀死刑囚=写真、(49)=が死亡したと法務省が明らかにした。
広島拘置所に収容中で、食べ物を喉に詰まらせて窒息死した。複数の持病があり、投薬治療を受けていたという。
確定判決によると、上田死刑囚は借金返済などを免れるため09年4月にトラック運転手の男性、同年10月に電器店経営の男性にそれぞれ睡眠薬を飲ませ、鳥取県の海と川で溺死させた。
【1月16日付】上田死刑囚が死亡 鳥取連続不審死 食事中に窒息
<8位>平井知事5選(4月)
任期満了に伴う4月9日投開票の鳥取県知事選で、自民、公明両党の地方組織と立憲民主党が推薦した現職の平井伸治氏(62)が共産党の新人を退け、5選を果たした。地方自治法が施行された1947年以降、平井氏は、4選の石破二朗氏と西尾邑次氏を抜き歴代最長となった。
平井氏は20万442票を獲得し、得票率は2019年の前回選比0.43ポイント減の91.83%。多くの有権者の支持を集めた一方、投票率は48.85%にとどまり、前回選を4.24ポイント下回って過去最低を更新した。
<9位>再選定の倉吉統合小 校名は「打吹」に決定(12月)
倉吉市立成徳、灘手両小学校の統合に伴う校名選定で混迷した問題で、新校名が「打吹(うつぶき)」で決着した。来年4月に校名が暫定の「成徳」から変更される。
校名は一度は「至誠」に決まったが、アンケートの投票結果が反映されていないなどとして反対する住民の直接請求で白紙に。1月の臨時市議会を経て、4月の統合時は暫定措置で「成徳小」として開校した。
その後、校区内の児童や保護者へアンケートを取り直し、最多の「打吹」が校名案に決定。12月定例市議会で可決され、二転三転した校名選定に終止符が打たれた。
【12月21日付】新校名「打吹」に決定 倉吉市議会可決 来年4月から
<10位>鳥取県美 開館日決まる(11月)
倉吉市駄経寺町2丁目に建設中の鳥取県立美術館の開館日が、2025年3月30日に決まった。美術館は3階建てで、延べ床面積約1万600平方メートル。1階に県民ギャラリー、2階に常設展示室、3階に企画展示室と展望テラスを設ける。総事業費は約148億円。
県内外の10社でつくる鳥取県立美術館パートナーズが建設し、運営する。展示の目玉はポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルの立体作品「ブリロの箱」、伊藤若冲(じゃくちゅう)の「花鳥魚図押絵貼屏風(びょうぶ)」など。24年3月に建物が完成し、県に引き渡される予定。
【11月6日付】鳥取県立美術館、25年3月30日開館
































