26年にわたる運行を終え、終点のJR木次駅ホームに入るトロッコ列車・奥出雲おろち号=雲南市木次町里方
26年にわたる運行を終え、終点のJR木次駅ホームに入るトロッコ列車・奥出雲おろち号=雲南市木次町里方

 1998年にJR木次線で走り始めたトロッコ列車・奥出雲おろち号が23日、車両の老朽化により運行を終えた。26年間、乗客の笑顔と沿線住民の見送り、四季の移ろいとともに駆け抜けた歴史に幕を下ろした。

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 おろち号は、沿線の活性化を狙って94年に旧横田町がJR西日本に導入を要請。トロッコ車と控車(客車)、ディーゼル機関車の3両編成で、98年4月に木次駅(雲南市木次町里方)から備後落合駅(広島県庄原市)で折り返すルートで運行を開始した。

 乗車人数は2022年度までに約34万人で、最終年度の23年度(4~11月)は2万1千人が乗った。ガラスのない開放的な車窓から望む中国山地の景色、急勾配を進行方向を変えながら上る3段式スイッチバック、日本最大級の二重ループ橋・奥出雲おろちループ(島根県奥出雲町八川)の眺めなど、多くの見どころがあり「木次線のシンボル」といわれるまでになった。

 最終列車は23日午前8時45分、汽笛を鳴らして出雲市駅(出雲市駅北町)を出発。線路沿いに住民が並んで手を振り、満席の乗客64人が振り返した。各駅でも多くの見送りや、ブラスバンドの演奏、子どもたちのダンスがあり、午後4時過ぎに終点の木次駅に到着。ホームなどに住民や鉄道ファンら約700人が集まり、万雷の拍手や手振りで役目を終えた列車をねぎらった。

 運行終了の式典でJR西日本山陰支社の佐伯祥一支社長は「沿線のおもてなしが全国に多くのファンをつくった」と、おろち号を盛り上げた住民や関係者の長年の活動に感謝。おろち号の代替として24年度に観光列車あめつちの木次線乗り入れが決まっており、引き続き沿線と連携して周遊観光のルート整備や情報発信に取り組むことを誓った。

 JR西によるとおろち号の客車2両は廃車。2両ある機関車のうち1両も廃車とし、もう1両は工事用車両として使う予定という。

 (山本泰平)