樹木希林さん=2012年
樹木希林さん=2012年

 俳優の樹木希林さんは、自分で着物を仕立て直して着る時に何を考えているのか問われ「失敗したらね、そこからスタートなの。あんまり深く考えない」と答えている。また、家を建てる時に大工さんが設計図と違う所に穴を開けたり、間違えたりしても「面白いものができるかもしれないので、直さずに教えてほしい」とお願いしたという▼いずれも『樹木希林120の遺言』から引いた。ミスの発生を前提にして、別の意味を持たせようとする発想があったからこそ、個性派俳優として生き残れたと述懐している▼当方の昨年の仕事を振り返ると、相も変わらず失敗を繰り返した年だった。他紙や他局の報道を見比べ「やられた」と自戒する日々。辛(つら)い感情が湧くたびに枕元にある樹木さんの本をめくり、肩肘張らない言葉に助けられた▼失敗は常に痛みを伴う。時にキャリアや人格を否定されたような感情に駆られる。ただ、痛みが残ったままでは再挑戦できない。樹木さんの言葉はネガティブな感情とどう健全に付き合っていくかを教えてくれる▼3連休が終わり、きのうが本格的な仕事始めという人もいるだろう。決して正統派と言えない樹木さんは「私の顔がミス。でもこのミスを生かそうと思ってやってきた」と笑い飛ばす。大仰に構えず、時にはこれくらいのユーモア感覚を持って仕事に向き合いたい。きょうも一日元気で行ってらっしゃい。(玉)