鹿島神宮で購入した、清めに使えるという「御祓砂」
鹿島神宮で購入した、清めに使えるという「御祓砂」

 玄関と室内の気になる箇所に「盛り塩」をしている。先月、鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)に参拝し、清めに使えるという「御祓(おはらい)砂」を購入した。元日から代用しているが、粗塩の白さに目が慣れたせいか、まだなじめない▼盛り塩の由来の一つは古代中国。女性が皇帝の乗った牛車を自宅に引き寄せるため、牛がなめる塩を盛ったことにちなむ客寄せの縁起担ぎとの説があるが、『<洗う>文化史』(国立歴史民俗博物館・花王編)によれば中世、将軍や大名の行列が通る際、河原のきれいな砂をまき、清浄な空間をつくるために、円すい形に砂を盛った「盛砂」の名残という▼現代の盛り塩は、貴重品だった塩が入手しやすくなってからの変化だとか。いずれにしろ、その殺菌作用などから塩は気枯(けが)れを払い、清めるとされる。生命の維持にも必須。減塩が推奨されるが、ミネラルが豊富な天然塩は摂取した方がいい、との説もある▼そんな大事な塩を、越後の上杉謙信が敵方である甲斐の武田信玄に送り、領民を救ったとされる日が、1569年のきょう1月11日。苦境にある敵をあえて助ける意味のことわざの基になる故事だ▼翻って岸田政権。平和国家を掲げながら、国会での議論なしに防衛装備品の輸出ルールを緩和。「敵に塩を送る」わけではないものの、殺傷能力がある武器の輸出を許してしまった。そのちぐはぐさに「清めの塩」を送りたくもなる。(衣)