12日の本紙スポーツ面にベタ記事が載った。プロ野球西武が国内フリーエージェント(FA)権を行使してソフトバンクに移籍した山川穂高内野手の人的補償として、甲斐野央投手の獲得を発表したという内容。
ところが前日に一部スポーツ紙が、人的補償に和田毅投手(出雲市出身)を指名する方針を固めたと1面トップでスクープ。来月43歳を迎えるベテラン左腕の「流出報道」に、ファンは交流サイト(SNS)上で「信じられない」「もうファンを辞める」などと強い拒否反応を示した。
この騒動を知り〝江川事件〟を思い出した。1978年のドラフト会議前日、巨人が野球協約の盲点を突いて、前年のクラウンライター(現西武)の指名を拒否して浪人中だった江川卓投手との契約を発表。「空白の一日」と呼ばれる大騒動になった。
コミッショナーの裁定は、翌日のドラフトで指名した阪神に入団し、その後巨人へトレードするという超法規的措置。代わりに阪神へ移籍したのが小林繁投手(鳥取県琴浦町出身)。翌年22勝を挙げ、特に巨人戦は無傷の8連勝だった。不屈のエースは14年前、57歳の若さで死去。きのうが命日だった。
和田投手を巡る騒動ではファンの強烈な反発を考慮して方針転換したとの報道もあるが、真相はやぶの中だ。28選手のプロテクトから漏れたとされる左腕には、同じ山陰出身の不屈のエースに負けぬ意地を見せてほしい。(健)