あすからは一年で最も寒くなる「大寒」。能登半島地震の被災者には一段とつらい時季になる。そうでなくてもこの冬は、年のせいか足先が冷えて、湯たんぽのお世話になっている。小ぶりのポリエチレン製で、低温やけどに気を付ければ使い勝手がいい。お湯を入れて専用の袋に収め、早めに布団の中に入れておく。
寒くなると、こたつや湯たんぽが恋しくなる。「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」といわれるからだろうか。そういえば、夏目漱石の『吾輩は猫である』にも<頭寒足熱は延命息災の徴と傷寒論(しょうかんろん)にも出ている>とある。傷寒論とは中国の古医書のことだそうだ。
ただ日本の慣用句では、足の字を使う言葉はあまり良くない意味のものが多い。足を引っ張る、足を洗う、揚げ足を取る、浮足立つ-など次々に浮かぶ。
その背景について歴史学者の立川昭二さん(1927~2017年)は、著書『からだの文化誌』の中で<上(かみ)・下(しも)の区別を重んずる日本人が下肢を卑しいものと考えてきた名残り>と考察していた。なるほどと思う。
政治家向けの成句もある。「足寒ければ心を傷(いた)む。民怨(うら)みて国を傷む」。足が冷えると心臓が悪くなるように、庶民をおろそかにすると不満が募って国を危うくするという戒めだ。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件の立件は、いよいよ大詰めを迎える。「大山鳴動して鼠(ねずみ)一匹」の幕引きになれば、下々の不満は募る。(己)