自民党の政治刷新本部の会合に臨む(左から)茂木幹事長、岸田首相、麻生副総裁=22日午後、東京・永田町の党本部
自民党の政治刷新本部の会合に臨む(左から)茂木幹事長、岸田首相、麻生副総裁=22日午後、東京・永田町の党本部

 この程度で本当に政治を刷新できると考えたのか、政治とカネの透明化が図れるのか、大きな疑問符が付く中身だ。踏み込み不足は否めず、あちこちに抜け道も残る。看板に偽りありと言わざるを得ない。

 自民党は、派閥の裏金事件を受けて党政治刷新本部がまとめた政治とカネの問題の再発防止、党改革に関する中間報告を了承した。

 焦点の政治資金の透明化は、具体策に乏しい。政治資金規正法違反で議員や会計責任者が逮捕・起訴された場合の議員の処分厳格化などを明記したものの、いずれも党の内規の見直しにとどまる。

 他党が主張するパーティー券購入の公開基準引き下げ、規正法違反に議員の連帯責任を負わせる連座制には触れず、抜本改革にはほど遠い。

 政治家個人に渡される領収書不要の「政策活動費」、国会議員に月額100万円支給している「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)の見直しにも言及しなかった。果たして自民党に政治の刷新を断行していく覚悟はあるのか。

 党改革も中途半端だ。派閥の在り方では「資金と人事を遮断する」(岸田文雄首相)と、派閥推薦人事やパーティー、資金手当ての禁止を盛り込んだものの、派閥の全廃を打ち出せず、政策集団として事実上の存続を容認した。

 事件を踏まえ、安倍、岸田、二階、森山の4派が解散を決める一方で、麻生、茂木両派は同調しない意向だ。

 一致した対応を迫れなかったのは、難色を示す麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長への配慮があったからだと容易に想像が付く。機先を制する形で岸田派解散を宣言しながら、ちぐはぐな状況を許す腰砕けぶりは、首相のやる気とリーダーシップの欠落を象徴している。

 派閥が政策集団になっても、いつの間にか復活したのが自民党の歴史だ。派閥のパーティーを禁止しても、領袖(りょうしゅう)ら幹部が大規模なパーティーでカネ集めをして、議員に配れば実質的に変わらないとの見方も絶えない。1989年の政治改革大綱で党執行部や閣僚の派閥離脱を掲げながら、それすら明記しなかった中間報告は、改革への本気度を疑わせる。

 そもそも、今回の事態を招いた安倍派の当事者らは、いまだに実態をつまびらかに説明していない。自身は知らぬ存ぜぬで、秘書や会計責任者に責任を押し付け、幹部の誰一人責任を取ろうとしない政治の姿に、国民はうんざりしている。

 党として徹底的に調査した上で、裏金を受け取っていた議員と金額のリストを公表し、誰がいつ始めたのか、なぜ政治資金収支報告に記載しなかったのか、裏金の使途などを説明するところから、党改革は始まる。それ抜きに小手先の再発防止策を決めても、論点そらしにしか映らず、国民は納得しまい。

 立件されなかったとはいえ、安倍派幹部らに政治的、道義的責任があるのは明らかだ。自民党執行部は、政治責任を取るよう求める考えとされるが、毅然(きぜん)とした対応が不可欠だ。

 通常国会が始まった。「政治とカネ」が大きな論点となる。自民党は、野党と真摯(しんし)に向き合い、安倍派幹部らの説明責任や企業・団体献金の全面禁止、政策活動費の透明化など、思い切った改革案を受け入れてもらいたい。