夏目漱石の肖像がデザインされた旧千円札(下)と現行の千円札
夏目漱石の肖像がデザインされた旧千円札(下)と現行の千円札

 久しぶりにお目にかかった、と思う。先日の雪の影響で電車で通勤した際、切符を買おうと券売機に千円札を入れるが、何度やっても返却される。なぜだとお札を確かめて、目が合ったのが夏目漱石だった。券売機が旧札に対応していなかったのだ。

 色合いやデザインが今の千円札に似ており、財布に入ったのも気付かなかった。夏目漱石の肖像が使われた千円札の発行は1984年から。伊藤博文からバトンを受け取った。2004年に今の野口英世に変わり、今年7月3日からは同じ細菌学者の北里柴三郎が登場する。

 お札の顔が変わることは老若問わず関心事だったが、今はそうでもないのかもしれない。若者を中心にカードやスマートフォンでのキャッシュレス決済が主流となって財布を持たない人が増え、お札に触れる機会が少ないからだ。

 個人的にはまだまだ「現金主義」で、目に見えない決済はどこか信用できないという気持ちがある。ただ、免許証や保険証も入れた財布を持ち歩くのはかえって不用心であり、レジの前で小銭をじゃらじゃらと探す支払いも非効率ではあるだろう。

 物も考えも更新するには好機だ。きょう2月8日は「事始め」。神様を迎える正月行事が終わり、農事などの日常生活が始まるという昔からの風習だ。新しい目標に挑戦するとともに、目には見えないわだかまりや、もやもやした気持ちも一つサヨナラしますか。(衣)