サッカー女子のパリ五輪アジア最終予選の北朝鮮戦で、前半終了間際に好セーブするGK山下杏也加選手=国立競技場
サッカー女子のパリ五輪アジア最終予選の北朝鮮戦で、前半終了間際に好セーブするGK山下杏也加選手=国立競技場

 米大リーグ大谷翔平選手の結婚報道に話題をさらわれたが、サッカー女子の日本代表「なでしこジャパン」がアジア最終予選で北朝鮮に競り勝ち、パリ五輪出場を決めた。GK山下杏也加選手がゴールラインぎりぎりで相手のシュートをかき出した好守備は「山下の1ミリ」と称賛された▼「1ミリ」といえば「三笘の1ミリ」。2022年のサッカーワールドカップ(W杯)で、ポスト脇から外へ出そうになるボールを必死に折り返した三笘薫選手のライン際のプレーが脚光を浴びた▼これまで「1ミリ」で耳にしていたのは、「1ミリも思っていない」など「ない」を強調する際の表現。政治家からは買収事件を巡り「1ミクロン(千分の1ミリ)も関わっていない」との言葉も。よほど強く否定したかったのだろう▼この人も「思いは1ミリたりとも後退してない」と口にしたことがある。岸田文雄首相だ。21年9月、自民党新総裁に選出された後の会見で、党役員の任期制限を盛り込んだ党改革案に関する発言。半年後の党大会で実現させている▼今は、当時より強い決意と覚悟が求められる。党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、政治に対する国民の不信感は増幅するばかり。現職首相で初めての衆院政治倫理審査会への出席がどれほど国民に響いたか。起死回生につながる「スーパープレー」は望めない。「1ミリずつ」着実に信頼を回復していくしかない。(彦)