新大阪で特急サンダーバードに乗り換え金沢へ向かう。車窓から琵琶湖が消え、北陸に入ると線路脇の家々で雪かき中。ふと同じ日本海側の島根の空を思う。手取川(石川県)に差しかかると戦国時代、この地で織田軍を撃破した武将・上杉謙信の姿を想像する。そんな旅情も昔話となる。
北陸新幹線の金沢―敦賀(福井県)間が延伸開業。サンダーバードは敦賀までとなり、北陸の旅が様変わりした。来月、特急やくも(出雲市-岡山)の新型車両が投入されるとはいえ、北陸がうらやましい。
山陰の新幹線を勇み足で〝妄想〟してみる。例えば現在の松江駅を使うのか。高速で走るので経路は直線的な方が望ましいが、今の山陰線は湾曲している。建物の密集具合、土地の有無、地形、地盤も重点項目。広島、岡山のようにカーブを気にせず、もともとの駅に乗り入れた場所もある。
今年は東海道新幹線開業から60年。輸送量増大による在来線の逼迫(ひっぱく)を見越して計画された。この成功で敷設目的が地域振興と結びついた。経路や駅の誘致合戦も活発化。那須塩原(栃木県)、上越妙高(新潟県)など地名を合体させた駅名の多さに足跡を見る。
道路に話を移すと、松江道や浜田道がある現在、かつて主要道だった国道54号や186号のくねくね道を走ると、今の速度感覚に合っていない。鉄路も同じだ。妄想を楽しみつつ、時代に取り残される危機感は消えない。(板)