弓祭りの中で最も古式に近いとされる島根県隠岐の島町の指定無形民俗文化財「花生(はないけ)神社祭礼風流(百手(ももて)祭り)」が28日、同町津戸の津戸漁港で営まれた。裃(かみしも)姿の役主2人が慎重に伝統の所作を一つ一つこなし、大きな的に矢を命中させた。
江戸時代初期の書物に記述がある伝統の祭りで、大前と小前と呼ばれる2人の役主の所作が多いのが特徴。今年は大前を松江工業高等専門学校に通う角脇嵐さん(18)、小前は近くの漁師小野一義さん(56)が務めた。2人は18日に稽古を始め、所作の動きや手順を覚えた。
この日は早朝、海でみそぎを済ませ、神社の境内で神事が執り行われた。昼過ぎに先払いが先頭となり氏子や神職、みこしが行列を作って神社から海岸までの路地を練り歩いた。
中央に出た大前が弓を持って厳かに所作を進め、大声で「カンの矢」と叫んで東西に1本ずつ遠矢を放った。その後、2人は独特の所作をした後、直径約2メートルの的を矢で射抜き、観衆から大きな拍手が送られた。
観光で訪れた京都市左京区の運送業大前悠(はるか)さん(37)は「ヒッチハイクをしていたら偶然、祭りがあると知らされた。長い歴史のある祭りを見ることができて、いい思い出になった」と話した。(鎌田剛)