台湾で震度6強の地震が発生し、東部の花蓮などで建物が倒壊して死傷者が出ている。約250キロ離れた沖縄県・石垣島などでも津波が観測されており、台湾での被害は拡大しそうだ。
日本は台湾と正式な外交関係がないが、過去の震災で互いに助け合い、絆を強めてきた。台湾は1月の能登半島地震でも直ちに救助隊を派遣する態勢をとった。今度は日本が支援を行う時だ。
台湾の発表によると、震源地は台湾東部沖で、地震の規模はマグニチュード(M)7・2。全土で揺れを感じたほか、建物倒壊や土砂崩れなどが起きた。一部で学校は休校となり、鉄道も運休した。
まだ被害の全容は分かっていないが、台湾メディアは1999年9月に起き、2400人を超す死者が出た中部地震以来の規模だとしている。台湾では99年の地震後に建物の耐震基準を強化したが、老朽化している建物も多いとみられる。
台湾は、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートがぶつかる位置にあり、日本と同じ地震多発地帯だ。花蓮では2002年にM6・8、18年にはM6・4の地震が発生し、死傷者が出た。日本は1999年の地震で救助隊を派遣。阪神大震災で役立った仮設住宅を寄贈した。2011年の東日本大震災では、台湾は緊急援助隊を送ったほか、200億円という世界トップクラスの寄付金を贈り、日本人を驚かせた。
18年の花蓮地震では、日本が救助隊を派遣。能登半島地震では日本側にニーズがなく、救助隊派遣は実現しなかったが、台湾政府が中心となって募金活動を行い、25億円を超える寄付金を集め、石川県民から感謝された。震災を巡り互いが「恩返し」をする日台の好循環を生んでいる。
日本は1972年に中国との国交正常化と同時に台湾と断交し、台湾との関係は弱まった。だが人道支援は外交の壁を乗り越えて民間関係を強めた。今回も交流サイト(SNS)では「今こそ台湾を支援しよう」といった書き込みが相次ぐ。被害の広がりは避けられない見通しで、台湾が必要とするなら日本はできる限りの支援をすべきだ。
岸田文雄首相は「要請に応じて早急に支援を行う」と述べた。被害の程度によるが、住民の救助のほか、医療や地震の専門家の派遣も想定される。被災者の生存率は災害発生後72時間が鍵とされ、救助隊の派遣はスピードが重要だ。
1月の台湾総統選で、中国と距離を置く民主進歩党(民進党)の頼清徳候補が当選したため、中台関係は険悪になっている。中国は台湾海峡で軍事威嚇を繰り返し、台湾と外交関係を維持してきた南太平洋の島国ナウルと国交を結んで台湾と断交させた。
だが中国は政治的な問題とは別次元で、積極的に支援の手を差し伸べるべきだ。中国が寛容な態度で臨めば台湾人の心をつかみ、平和的対話のきっかけとなる可能性もある。
99年の地震では、各国政府から相次いだ台湾への支援に対し、中国外務省が一方的に台湾を代表して国際支援に感謝を表明。2018年花蓮地震では、中国は民進党の蔡英文政権の頭越しに、中国と関係の良い花蓮県長に直接支援を申し出た。こうした政治的な対応は、かえって台湾人の反発を買う結果になるだろう。












