シャープペンシルを握る鳥海修(69)の手が、1枚の紙の上をすっすっと上下左右に動く。周りで顔を寄せ合う人たちが0.3ミリの芯の先を凝視している。目で追うのは、明朝体で書かれた平仮名の「み」。場の空気が張り詰めていく。

 長野県松本市で4月に開かれた「松本文字塾」の開講日。鳥海は十数人の受講生の前で「み」の形を整える作業をしてみせた。「太くしたり細くしたりする時に、本当に慎重にやること」。受講生はこれから1年かけて自分のイメージで明朝体の仮名をデザインする。...