秋田県鹿角市内で自動撮影カメラに写ったクマ=2023年8月(同県自然保護課提供)
秋田県鹿角市内で自動撮影カメラに写ったクマ=2023年8月(同県自然保護課提供)

 日本に古くから伝わる言い回しに「地震・雷・火事・親父(おやじ)」がある。世の中で恐れられているものを順に列挙した表現だ。自然現象の地震と雷は、現在も発生時期や場所の予測が難しく「怖い」存在。ただ、火事と親父は用心次第で被害を回避できそうだ▼今の世の中に置き換えるなら「地震・雷・豪雨・クマ」といったところか。先週の梅雨前線による記録的な大雨には恐怖すら覚えた。島根県の観光名所の一つ、出雲市大社町日御碕地区は市街地につながる県道が崩落し、孤立状態に▼電気や水道といったライフラインに影響がなかったのは幸いだが、心配なのが食料品など物資の輸送。あらゆる手段を駆使してほしい。いずれ観光地としてのイメージ回復も課題になるだろう。復旧作業と並行して、今から戦略づくりを始めても早過ぎることはない▼もう一つの「怖い」ものとして近年、注目を集めているのがクマだ。昨年度は過去最多となる219人の人身被害が発生。市街地への出没も増え、山陰でも島根県西部を中心に目撃情報が相次ぐ▼一方で、クマにとっては不可抗力という側面もある。人口減少により中山間地域での人の活動が低下。山林や里山の手入れが行き届かず、人の生活圏に近づきやすくなった。隠れ場所や移動ルートになりそうな辺りの草木を刈り払うなど「すみ分け」作業も必要だ。「怖い」ものを回避する用心が欠かせない。(健)