仕事で使用していたフィルムカメラ
仕事で使用していたフィルムカメラ

 近年、フィルムカメラが若い世代から注目を集めている。デジタル全盛の時代なのになぜ、と不思議に思うが、フィルムを使った撮影の仕方や色合いが新鮮に映るらしい▼記者として仕事で使っていたフィルムカメラは、苦い思い出がいっぱいだ。何しろ、現像が終わるまできちんと写っているかどうか分からない。明るさやピントが合っておらず、撮り直しに行くこともあった。1本のフィルムで撮影できるのは多くて36枚(こま)。肝心な場面でフィルムが終わってしまいかねないから、一こまが大切だった▼撮影の失敗もあり、アナログなところが、デジタル世代には魅力的なのだろう。ブームに応える形で先日、フィルムカメラの新型機が発売された。フィルムの巻き上げを手動にするなど「操作する楽しさ」も感じられるようにしたという▼音楽でもレコードの価値が再評価され、若者に人気のアーティストらがアナログ盤も発売している。聞くのにも手間がかかるレコードだが、デジタルとはまた違った音の厚みや柔らかさが懐かしさを誘う▼写真も音楽もデータで手軽に楽しめる中で、アナログに興味を持つ若い世代。不便さや人間くささを受け入れてくれているようで、どこかほっとする。ただ、プリントはあまりしないらしい。形あるものに安心感を覚えるアナログ人間の当方も、押し入れに眠っているカメラにフィルムを入れてみようか。(彦)