「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」。1951年4月、連合国軍最高司令官を解任されたマッカーサー元帥が米国議会で退任演説した際の言葉だ。朝鮮戦争でのトルーマン大統領の戦略を批判した後、士官学校時代に流行した歌の一節を引用したとされる▼<老いぼれた兵たちは戦場で死ぬことなく(去っていく)>の歌詞の通り、自らを「戦場で死に損なった老いぼれ兵」と自嘲したのか。あるいは「これだけ実績を挙げた私を老いぼれ兵と呼ぶなら、勝手に呼べ」と、自らを解任した大統領に当てつけたのか。当時71歳だった元帥の真意は解釈が分かれる▼さて、この人の本心はどうだろう。11月の米大統領選で再選を目指した民主党のバイデン大統領(81)が撤退を表明した。高齢不安が顕在化した6月下旬の討論会後、党内で高まり続けていた撤退圧力に屈した格好だ▼「米国民の皆さまへ」との言葉から始まる声明文で「身を引いて大統領の残り任期に専念することが民主党や米国にとって最善だと考えた」と説明。ただ3年半に及ぶ大統領としての実績が全文の半分以上を占めていた。大統領としての自負だろうか。あるいは撤退を求めた人たちへの当てつけだろうか▼「私の決断の詳細は今週、国民に話す」とバイデン氏。一体何を語るのか。9月の自民党総裁選への出馬断念を求める声が上がる、わが国の66歳の宰相も気になるのではないか。(健)