ハンセン病の関連資料が並ぶ長島愛生園歴史館=2023年8月、岡山県瀬戸内市
ハンセン病の関連資料が並ぶ長島愛生園歴史館=2023年8月、岡山県瀬戸内市

 昨夏訪れた岡山県瀬戸内市の国立ハンセン病療養所・長島愛生園内の歴史館では、園にあった目が不自由な入所者によるハーモニカバンド「青い鳥楽団」の歩みを紹介していた。団を率いた近藤宏一さん(1926~2009年)の手記を基にした展示。結成のきっかけとなった入所者の言葉が心に残った▼「プロミン(治療薬)はわしらを肉体の苦痛から解放した。らい予防法改正反対運動は生活を向上させる。しかし、そうした政治や医学だけでわしらの全てが、心の底にあるものが、生きるということが解決するだろうか」▼「不自由でも、わしら自身が楽しみを求め、喜びを生み出すことができないだろうか。問題は山ほどあろう。障がいもまちかまえていると思う。しかし皆で話し合い、知恵を出し合っていこうではないか」▼隔離政策の下、家族から切り離され、名前も捨てざるを得なかった元患者たちは療養所で歌を詠み、文をつづり、生きた証しをあらゆる形で表現した。どうかすると埋もれそうな言葉の一部は、書籍となって今に伝えられる▼そうした一冊を基に、東京都の国立ハンセン病資料館が初めて女性に特化した連続講座を来月から開く。取り上げられることがなかった療養所内での社会的性差や複合差別がテーマ。後日、動画配信され誰でも視聴できる。計り知れない苦しみの中で生まれ、昇華した言葉をしっかりと受け止めたい。(衣)