先日、久しぶりに上京した。羽田空港も駅も街中も人でごった返していた。マスクをしている人は少なく、外国人とあちこちで擦れ違った。コロナ禍を経てよく知る大都会の姿が戻っていた。
10代の頃、東京に憧れた。今から30年以上前、インターネットは普及しておらず、島根にはコンビニエンスストアもない時代。テレビで見る都会はキラキラしていた。東京の大学に進学し、初めての都会暮らしは新鮮だった。島根では夏祭りでしか味わえない人混みが日常だった。初めはなぜ誰も助けないのかと思った、駅にいるホームレスの姿も当たり前になった。東京の感覚に慣れ、卒業後に島根に帰ることが決まると嫌でしょうがなかった。
年を重ねるごとに価値観は変わった。2度目の東京暮らしは30代。10~20代にあれだけ楽しかった娯楽も与えられたものばかりだと思った。満員電車、隣の住民も知らない生活。家族もいた。暮らしにくいと感じ、故郷が恋しくなった。
一度県外に出たからこそ、故郷の良さを知ることができた自分は幸せだと思う。後輩が言っていた。「都会では小さな歯車にしかなれないけど、島根では大きな歯車になれる」
新型コロナウイルスの5類移行後、2度目の夏を迎えた。お盆には多くの人が帰省し、大切な人と再会するだろう。価値観、幸せの形は人それぞれだが、故郷は同じだ。「お帰りなさい」の言葉で迎えたい。(添)