11月の米大統領選で返り咲きを狙う共和党候補のトランプ氏は、2カ月で2度の暗殺未遂に遭った。1度目は7月、演説中に撃たれ銃弾が耳をかすめた。2度目は今月、ゴルフのプレー中に銃を持った男が近くに潜んでいた。あわやの凶行をかいくぐった元大統領は「恐るべき強運の持ち主」と騒ぎ立てられもした▼こちらは抗(あらが)いようのない天災が一度ならず二度も。元日に大地震に見舞われた石川県の能登地方を今度は記録的な大雨が襲った。なぜまた能登なのか…。土砂や流木に覆われたおびただしい被害があらわとなり、惨状に胸が締めつけられる▼二重被災者の男性は「運はよかったのだろう」とテレビの取材に答えていた。命は助かり、けがもなかった。重なった不運を嘆くより、不運から二度も抜け出せた運に感謝するとはどういう境地だろう。男性の表情と言葉が頭から離れない▼さりとて地震からの復興半ばでまたの被災はさすがに心が折れよう。一部の仮設住宅は床上浸水し、入居者は2次避難を強いられている。テレビのニュースで「再建のとどめを刺された」とうなだれる人の姿もあった。何より大雨被害で亡くなった人も、行方や安否が分からない人もまだいる。懸命の捜索が続く▼そんな悲しみや落胆の中にいる被災者にはどう映るだろう。その人は能登に光を届けられるのか。次の首相となる自民党の新総裁がきょう選出される。(史)