自民党総裁選の決選投票前に演説する石破茂氏(右)と高市早苗氏=9月27日、東京・永田町の党本部
自民党総裁選の決選投票前に演説する石破茂氏(右)と高市早苗氏=9月27日、東京・永田町の党本部

 「議員生活38年、多くの足らざることがあり、多くの方の気持ちを傷つけた。嫌な思いをされた方が多かったと思う」。9月27日、自民党総裁選の決選投票前にあった最後の演説。石破茂氏(衆院鳥取1区)のスピーチは「おわび」から始まった

 物言う姿勢を貫き、「党内野党」として安倍政権などに批判的だった石破氏。岸田政権の実績に触れ「心から敬意を表する」と述べるなど、5分間の訴えは党内へのメッセージ性が強かった

 制限時間を超えても演説を続け、話をまとめきれなかった高市早苗氏と比べ「格が違った」との感想を、石破陣営以外の参院議員から聞いた。決選投票で逆転勝利し、総裁、そして首相の座を射止めた要因の一つだろう

 思えば、この頃から党内に配慮する兆しが見えていたかもしれない。1週間後のきのう、首相として臨んだ所信表明演説は、国民に向けた強いメッセージが発信できただろうか。派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡る対応は「まずは問題を指摘された議員一人一人と改めて向き合い、反省を求め、ルールを守る倫理観の確立に全力を挙げる」としたが、政治の信頼回復への具体的な道筋を示したとは言い難かった

 政治家にとって「言葉が命」なのは言うまでもない。衆院解散・総選挙を巡る判断など宰相として発言と行動の整合性が早速問われている。党内ではなく国民の心に響く言葉が聞きたい。(吏)