ハリス米副大統領(左)とトランプ前大統領。米大統領選は5日に投開票される(ロイター=共同)
ハリス米副大統領(左)とトランプ前大統領。米大統領選は5日に投開票される(ロイター=共同)

 5日の投開票が迫る米大統領選。中西部の穀倉地帯アイオワ州の結果に注目している。2004年の選挙から4回連続で、ここで勝った候補が大統領になったからだ。米国の本質は、華やかなニューヨークの摩天楼やハリウッドではなく、アイオワにあると思っている

 映画『マディソン郡の橋』『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台と聞けば身近に感じる人も多いだろう。前者は不倫した人への周囲の視線が恐ろしく、主人公の主婦も恋愛感情と地域社会の間で苦しむ。後者はPTAの会合で「悪書を燃やせ」「燃やすな」と激論が交わされる

 画家グラント・ウッド(1891~1942年)もここで活動した。『アメリカン・ゴシック』は米国を代表する一作。構図、色合いは美しいが、登場人物の表情が不思議だ。ウッドは同性愛者で社会的体裁のために偽装結婚したとされ、屈折した心情が表れているようにも感じる

 これらの名画に共通するのが、自由で民主的と聞いていた米国の意外なまでに強固な保守性と閉鎖性だ。連邦議会襲撃の扇動などで起訴されたトランプ候補の責任について以前、アイオワの党員集会に参加予定の共和党有権者の61%が、有罪判決を受けても「支持に影響しない」、19%が「より支持を強める」と答えていた

 とても健全な思考とは思えず理解できない。だが、この特性の中に根強いトランプ人気の秘密がある。(板)