図書館で見つけたチラシに、また会えるとうれしくなった。9日に鳥取県大山町で映画「かづゑ的」の上映会が開かれる。主役は何度か小欄で触れた、岡山県の国立ハンセン病療養所で暮らす宮﨑かづゑさん(96)
映像ジャーナリストの熊谷博子さんが8年にわたって密着したドキュメンタリーを、3月に広島の映画館で鑑賞した。劇場での上映は終わり、有志による自主上映に移っている
かづゑさんは10歳で入所。病気の影響で手指と足を切断し、視力もほとんどない。密着の初日、「心は病んでいない。ありのままを撮ってほしい」と監督に告げ、風呂にもカメラを入れることを強く望んだ。「私の体を見ないと分からないでしょ」。作中では施設職員に介助されて洗髪、入浴する、まさにありのままのシーンが映し出された
口癖は「やろうと思えばできるんよ」。少女期は入所者からの壮絶ないじめを経験。体も不自由になっていったが、家事に趣味に、できることは工夫して何でもこなす。支えたのは、膨大な読書量から得た知識と知恵、家族からの愛情だった。人が生き抜くには何が大事かを教えてくれる作品だ
施設がある島についてかづゑさんは「不思議な島。天国だし、地獄だしね」と表している。誰も程度の差はあれど、“天国と地獄”を経験するだろう。地獄を踏みしめて天国にしたかづゑさんの生き方に、映画を通してまた会える。(衣)