鳥取出身の人と話すと「ようたんぼ」という言葉を聞くことがある。方言などの辞書で調べると「酔坊」と書く。いわゆる酔っぱらいのこと。兵庫県但馬地方や徳島、高知両県でも使われるらしい。「ようたんぼ」の状態で家に帰る際に感じる秋風は心地よい。ただし、自転車で「風を切って」は絶対に駄目だ▼きょうから自転車の交通違反の罰則が強化される。「ようたんぼ」つまり酒酔い運転は、従来禁止されているが、今回施行された改正法では「酒気帯び運転」の罰則も整備され、より厳罰化された▼「自転車は車両」。当たり前の話ながら、急いでいる時、道路が混んでいる時、タクシー代を浮かせたい時など、つい自分に都合の良い解釈をしてはいないか。先日の衆院選で「ルールを守る」と首相が繰り返していた。自問したい▼歩行者の安全確保の観点で、自転車に対する締め付けが強化されるのはやむを得ない。飲酒ほどでない軽微な違反に対し、青切符(反則金)を切られる場面も増えるだろう▼一方、自転車が原則走る車道の環境は劣悪な場所が多い。松江市内の一部の自転車通行帯は、青い線を引いただけで、油断していると事故を起こしかねない段差が残る部分も少なくない。がたがたとする振動が激しく、飲酒していなくても「ようたんぼ」になりそうだ。反則金が増えるなら、自転車通行帯の環境整備にも気を砕いてほしいものだ。(万)