すったもんだの揚げ句、ようやく東京五輪が開幕した。国立競技場のデザイン変更やエンブレム盗用疑惑を皮切りに、大会組織委員会会長の女性蔑視発言、開閉会式演出統括と開会式楽曲担当の引責辞任。新たな演出統括も解任された▼一連のごたごたに、新型コロナウイルスとの闘いも加わった。開催は1年延期。最近、東京では連日千人を超える感染者が出ている。感染力が強い変異株の感染も広がっている。ほとんどの会場は無観客開催となるなど異例の五輪運営だ▼コロナ禍以外にも前回1964年の東京五輪に比べ大きく変わったのは、プロ選手の参加だ。以前は選手は全員アマチュアだった。プロ選手がほとんどの現在とは全く違う選手生活だった。競技にかかる費用、遠征費などは選手個人にかかっていた▼「いささか私財を投じて、選手を派遣したい」。32年のロサンゼルス五輪を前に、松江市出身で大日本体育協会(現日本スポーツ協会)会長の岸清一氏が30万円を寄付した。千円で家1軒建つといわれた時代。巨額の寄付だった▼64年9月30日、島根県庁前にある岸氏の銅像が復元され、除幕式に親交があった国際オリンピック委員会(IOC)のブランデージ会長が出席した。会長は五輪開催地を出てはならない、というルールを破ってまで出席した。岸氏は、今回の東京五輪をどういう思いで見守っているのだろうか。聞いてみたい。(富)