関西電力高浜原発1号機=福井県高浜町
関西電力高浜原発1号機=福井県高浜町

 50年前のきょう、福井県にある関西電力高浜原発1号機が運転を開始した。国内で稼働する原発では最古。50年どころか最長60年運転できる手続きをクリアし、なお現役だ。

 同じ年の3月29日に運転を始めた中国電力島根原発1号機(松江市鹿島町片句)は廃炉の途にある。島根1号機は沸騰水型軽水炉で、加圧水型の高浜1号機と型は違うが、廃炉の方針が決まった2015年3月時点で、中電の技術陣は50年、60年運転に向けて十分自信を持っていた。

 東京電力福島第1原発事故の教訓から、原発をゼロに近づけていくのなら、両原発とも迎える運命は同じであるはず。では、明暗が分かれたのはなぜか。島根は2号機、3号機の稼働を前に進めるために、1号機を廃炉にしないと世論が納得しないとの政治的な思惑があったのは確かだが、いまだに解せない。

 エネルギー供給の在り方は、科学的見地による客観的な判断が重要だと思う。だが決めるのは政治だ。原発について「ゼロに近づける努力は最大限にする」と語っていた石破茂首相は近くまとめる経済対策で、安全性の確保を前提に原発の「最大限活用」を盛り込む考えだという。

 権力者として言葉に責任を持たねばならぬが故の“変化”と言えよう。それでは「最大限活用」と「ゼロに近づける」には一体、どこに分水嶺(れい)があるのか。時々で政治の判断が揺らいで技術者を振り回すのは気の毒だ。(万)