子どもたちが今の世の中を見つめた真っすぐな思いが伝わってきた。法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の作文コンテスト。島根県の最終審査に携わり、小中学生の作品に触れた。家庭や学校での体験を交え、犯罪や非行のない地域社会について考えたことがつづられていた▼小学生の部で最優秀の賞を受けた児童は「犯罪やいじめなど良くない行いや誰かが悲しむような出来事」を「社会の闇」と捉えた。本を読み友達や先生と話して考えを深め、「強い心」と「自分で確かめて行動すること」で社会の光の一つになる、という決意で締めくくった▼高齢者を狙った詐欺や強盗事件、交流サイト(SNS)による誹(ひ)謗(ぼう)中傷に目を向けた児童は「人の気持ちを考えた優しさが足りない」と指摘。素直な文章から、逆に現代社会の問題の多さを思わずにはいられなかった▼コンテストには県内から児童・生徒1040人が応募した。多くの子どもたちが必要だと書いたのは、人と人の触れ合いや思いやりだった。身近なところでは、あいさつや困っている人への声かけ、相手を理解すること、相談できる人や場所…。今の社会では十分でない、と感じていることの裏返しなのかもしれない▼子どもたちが安全に伸び伸びと生活できる環境をつくるのは大人の役割だ。作文を読みながら、その責任が果たせているのか、と問いかけられているような気がした。(彦)