島根原子力館の前庭に設置されている「誓いの鐘」。その先では島根原発が見下ろせる=7日午後2時、松江市鹿島町佐陀本郷
島根原子力館の前庭に設置されている「誓いの鐘」。その先では島根原発が見下ろせる=7日午後2時、松江市鹿島町佐陀本郷

 二十四節気の一つ「大雪」を迎えたきのう、中国電力島根原発(松江市鹿島町片句)を見下ろす高台にある島根原子力館(同町佐陀本郷)を訪ねた。館内では一足早くクリスマスイベントが開かれ、子どもたちのにぎやかな声が響いていた。

 雪はまだだったが、寒風が吹きすさぶ駐車場を歩いていると、モニュメントが目に飛び込んできた。出雲の銅鐸(どうたく)をモチーフにした高さ約3メートル、横幅約2メートルの「誓いの鐘」だ。

 島根原発1、2号機で多数の点検漏れが発覚。これを受け中電は、点検漏れが511カ所に上るとする総点検の結果や、再発防止策をまとめた最終報告書を経済産業省と島根県、松江市へ提出した。2010年6月3日のことだ。

 この教訓を風化させることなく、安全意識と行動について、自らそして相互に確認する日として中電はこの日を「原子力安全文化の日」に制定。記念のモニュメントを設置し、翌11年6月3日に除幕した。以来毎年この日に社長らが鐘を打ち鳴らす。その音色には自戒の念が込められている。

 島根原発2号機の原子炉がきのう、12年11カ月ぶりに動き始めた。経済界を中心に電力の安定供給とコスト安への期待はあるが、住民に高揚感はない。中電の点検漏れ後に東京電力福島第1原発事故が発生し、原発の「安全神話」は崩壊。再稼働にはより厳しい目が向けられている。鐘の音色はこれまで以上に重く感じるはずだ。(健)