<盗んだバイクで走り出す><夜の校舎 窓ガラス壊してまわった>…。聴いていた頃は格好いいと思っていたが、「10代の教祖」といわれたシンガー・ソングライターの故・尾崎豊さんの曲は歌詞の一部に犯罪があった。鬱屈(うっくつ)した心情を表す行為として、40年近く前の当時は犯罪か否かなど問わぬ空気があった。後で釈明させられるかもと思えば書けなかったはずだ▼東京五輪・パラリンピックの開会式で楽曲制作を担当した小山田圭吾氏が学生時代のいじめを巡り辞任した。表面的には都会的でおしゃれな音楽だったが、尾崎さんの反骨とは違う意味で斜に構え、尖(とが)っていた▼行為と栄達のどちらを悔やんでいるだろう。問題となったのが30年近く前の音楽雑誌の記事。いじめの度合いをはるかに超える中身だったという。かといって「けんかで相手を病院送りにした」「万引をしまくった」という内容だったら、悪事でもやんちゃ話で済んだだろうか▼反省せず武勇伝のように語ったのも問題だが、雑誌は懺悔(ざんげ)の場ではない。出版社もあの頃なら読者の苦情や非難はあっても散発的で、インターネットで横同士がつながり、批判が集中する時代が来ようとは夢にも思うまい。まして時空を超えて▼過去の清算は誰にも降りかかる話だ。栄達して光が強まれば影も濃くなる。時代背景は口実にならない。悪事はもちろん、妙な武勇伝は慎んだ方がいい。(板)