人生の悩みに耳を傾け、自殺予防につなげる「島根いのちの電話」の相談員が足りず、2人体制の維持が難しくなっている。これまで主力を担ってきた60代が、定年延長や定年後の継続雇用の影響もあって確保しづらくなっているのが理由で、事務局は人材確保に力を入れる。
事務局によると、相談件数は近年、年間1万1千~1万2千件で推移。本来2人体制を敷くものの、相談員が確保できず1人体制になることも多い。相談中、別の電話に対応できず、かかってきた電話を受けることができる確率(受信率)は約1割だという。
養成講座を受講し、認定を受ける必要があるボランティアの相談員は、少なくとも1カ月に2度の活動が原則となっている。人員的には100人程度が必要で、現在116人が登録。しかし実際に活動しているのは約7割にとどまる上、介護などで1カ月に1度しか活動できない相談員もおり、人員的に足りない状態だという。
背景には、相談員として主に活動してきた退職後の60代以上の人員が減少していることがある。定年延長や定年後の継続雇用の影響で、60代になっても仕事を続ける人が増えたほか、共働きの増加もあり、希望者が集まりづらいという。
加えて、相談員としての適性を身に付けるための養成講座を受講する必要もある。4月から1年間の養成講座は、座学中心の第1課程、実習がある第2課程がある。2023年度は54人が第1課程を受講したものの、第2課程に進んだのはわずか6人で、最終的に相談員に認定されたのは4人だった。ほぼ毎週土曜、半日拘束されるのが重荷になる人も多いという。
石橋裕子事務局長は「一本でも多く電話を取れるよう、養成講座を受け、相談員として活動する人が増えてほしい」と訴える。
相談員は20~75歳で、積極的に活動できる県民なら誰でも応募できる。申し込みは20日まで。第1課程はオンライン受講もできる。受講料が必要。問い合わせは事務局、電話0852(32)5985。
「電話、一本でも多く」
「あなたが心配です。明日、またかけてくださいね」。最後にそう声をかけ、「島根いのちの電話」の相談員は...