歌や踊りを通して地球環境保護の大切さを訴える出演者=2月16日、出雲市大社町杵築南の大社文化プレイスうらら館
歌や踊りを通して地球環境保護の大切さを訴える出演者=2月16日、出雲市大社町杵築南の大社文化プレイスうらら館

 汚いものが好きな妖怪と同じように地球を汚している人間。そのことにどうか気付いてほしいと競売人のジョーは歌う。<今ならまだ 生き返る まだ緑は少しある…>

 先日、本年度の公演を終えた県民ミュージカル『あいと地球と競売人』。毎年観劇するたびに思う。地球が生き返るには実はもう手遅れなのでは、と。

 沸騰化といわれる夏の猛暑から冬は急なドカ雪の異常気象が続く。ドイツの研究グループが発表した最新の地球の健康診断結果によると「取り返しがつかないことになる危険なゾーンに近づいている」のだとか。そこにきて米国の大統領閣下は温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の離脱を決めた。かくいう日本も及び腰で主導的役割を果たし得ない。

 そんなもどかしさを吹き飛ばし、明日への希望を持たせてくれるのがこのミュージカルのすごさである。出雲市斐川町の小学6年だった坪田愛華さんが亡くなる直前に描いた漫画が原作。単なる環境問題の啓発と違い、一人の少女の思いを子どもたちが代々受け継ぎ、メッセージにしている。だから心打たれる。

 今回は松江市を離れて、出雲市と大田市の会場で時期も年をまたいでの公演となった。例年とは違う環境に苦労も多かったと聞く。子どもたちは稽古を重ね、もがきながら心を一つにしてきたのだろう。困難を糧にして創り上げた舞台で、演じる姿はひときわ輝いて見えた。(史)