薬剤師から薬を受け取る患者(手前)=2024年6月、東京都内
薬剤師から薬を受け取る患者(手前)=2024年6月、東京都内

 その昔、医者は薬師(くすし)とも呼ばれた。医者が薬も調合したからだ。医師の処方箋で薬剤師が薬を出す形に法整備されたのは1956(昭和31)年。医と薬のダブルチェックで治療効果を上げ、安全性を保つ目的だった。

 島根県内では現在、病院、薬局を合わせて1429人の薬剤師が働いているが、求人サイトに「薬剤師は県内230人を募集」と出るほど人手不足だ。特に病院薬剤師が不足している。にもかかわらず、医療関係者を落胆させる事があった。

 中学校の授業で「AI(人工知能)の普及で不要になる職業」に薬剤師が取り上げられたという。「チーム医療では薬剤師の重要性は増している。不要と教えられて志望する若者が減れば将来の医療が危うくなる」と島根大学医学部付属病院の椎名浩昭院長。

 臨床現場で薬剤師は患者に寄り添い、薬の専門家として医師をサポートする。AIは機械的な調剤はできるが大切なところは教えてくれない。最後は人の判断なのだ。同病院は地域医療支援のため院内の限られた人材をやりくりし、この春から県内の医療機関へ薬剤師を派遣する。

 島根から毎年、約30人が大学薬学部に進学するがUターンはわずか。山陰両県に薬学部がないことも影響している。若者定住と地域医療のダブルに効能がある薬学部の設置。国は地方創生のメニューに載せていないが、ここは自治体から声を上げる手もあるのでは。(裕)