スカイドライブが公開した、大阪・関西万博に出展する「空飛ぶクルマ」のデモ飛行=9日午後、大阪市此花区の夢洲
スカイドライブが公開した、大阪・関西万博に出展する「空飛ぶクルマ」のデモ飛行=9日午後、大阪市此花区の夢洲

 「やくも」といえば、出雲市駅と岡山駅を結ぶJRの特急列車として知られる。ただ現在の伯備線がルートになったのは、山陽新幹線の新大阪-岡山間が開業した1972年3月から。それ以前は山陰線などを経由し、新大阪-浜田間を走っていた。今より速度も遅く、鉄道好きでなければぐったりしそうだ。

 その2年前、「やくも」に乗って大阪万博に足を運んだのが、当時鳥取市の中学2年生だった石破茂首相。よほど感動したのだろう。石破少年は万博に3回も来場。月の石や動く歩道、人間洗濯機など会場に展示された「未来の姿」に心が躍ったと振り返っていた。

 それから55年。きのうの開会式に続き「大阪・関西万博」がきょう、大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で開幕する。とはいえ、地元・大阪以外の盛り上がりはいまひとつ。海外パビリオンの建設遅れを筆頭にマイナス面ばかりが強調されている。

 そんな前評判を意識したのだろう。首相は3日にあった関連イベントで「もう一回あのにぎわい、わくわく感、躍動感、希望、夢を取り戻したい」と少年時代を振り返り、「行けば必ず楽しい」と来場を呼びかけた。

 大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。目玉の一つが「空飛ぶクルマ」のデモ飛行だ。いずれ「やくも」など鉄路に代わる交通手段になるのか。万博の成否の鍵を握るのは、首相も口にした「わくわく感」だろう。(健)