米東部ペンシルベニア州のスリーマイルアイランド原発=2017年5月(ロイター=共同)
米東部ペンシルベニア州のスリーマイルアイランド原発=2017年5月(ロイター=共同)

 その計画には驚いた。米国の巨大IT企業マイクロソフト社が、廃炉されるはずのスリーマイルアイランド原発1号機を再稼働させ、その電力を生成AI(人工知能)に使うという。1979年、炉心溶融を起こしたあの2号機に隣接する原子炉だ。

 グーグル、メタ、アマゾンといった競合社も一斉に原発確保に動き始めた。いずれも二酸化炭素を出さない電気を使うと大見えを切っていたのだが、太陽光や風力からの調達が難航。われ先に米国内の原発を囲い込んでいる。

 世界中の富を貪欲にかき集めるIT企業が主導権を争うのが生成AIの分野だ。AIを動かすには大電力を消費するデータセンターが必要で、いまさら従来の火力発電に戻れないので、原発と省エネガスタービン発電で乗り切る判断のようだ。

 AIデータセンターの建設ブームは日本にも上陸している。海外企業が4兆円の投資を計画。関東圏だけでも原発9基分に匹敵する電力の争奪戦が進行中だ。山陰地方にも波及し、水面下では新規進出に伴う電力確保の打診があったと聞く。

 2020年代は省エネが進み、電力需要は減るとされながら雲行きは怪しい。AIがもたらす便利さと引き換えに貴重な電気の奪い合いが起きている。AIの国際競争に遅れるわけにはいかないが、原発回帰の潮流が正しい選択となるのか、エネルギー小国の日本にとっては高度で難しい選択になりそうだ。(裕)