「コメは買ったことがない」との失言で江藤拓氏が農相を事実上、更迭された。参院選を目前に控えた閣僚の不祥事による交代で真っ先に頭をよぎったのは2007年の第1次安倍政権だ。
特に鬼門だったのが農相。事務所費や光熱水費問題が国会で追及された松岡利勝氏は5月に自ら命を絶った。後任の赤城徳彦氏も事務所費問題が発覚。顔に大きなばんそうこうを付けて会見に臨んだ姿が印象に残り、臆測を呼んだ。
失言もあった。久間章生防衛相が米国の原爆投下を「しょうがない」と発言した責任を取り7月に辞任。直後の参院選で自民党は大敗し、安倍晋三首相は退陣に追い込まれた。
議論を呼ぶ政策テーマも今回は07年と共通点が多い。「政治とカネ」や年金、都市と地方の格差拡大など。自民党が逆風の政治情勢も似通っており、石破茂首相の政権運営はまさに正念場を迎える。まずは新たな農相となった小泉進次郎氏とともに、コメ高騰対策で結果を出せるかどうかが問われる。
07年の参院選は、山陰両県の二つの選挙区とも自民前職が議席を落とした。合区となった「鳥取・島根」選挙区は今回、いまだに野党第1党の立憲民主党や国民民主党の候補者が定まらない。18年前に島根選挙区で勝利した国民新党(当時)の新人が出馬を表明したのは、公示約1カ月前の6月5日だった。両県民に選択肢を示せるかどうか。タイムリミットは迫る。(吏)