出雲市斐川町の旧海軍大社基地跡を巡り5月に同町内であった講演会で、戦後史会議・松江の若槻真治世話人代表が1枚のビラを紹介した。大日本帝国海軍航空隊名で印刷された「神州不滅!!」と題した檄文(げきぶん)だ▼「国民ヨ、米英ノ走狗(そうく)ノ甘言ヲ信ズル勿(なか)レ」「陸海航空兵力未(いま)ダ健在ナリ」「我等(われら)最後ノ一兵マデ戦ヒテ神州ヲ護持セン」と戦闘継続を訴えている。76年前のちょうど今頃、大社基地を飛び立った海軍機が、上空からまいたとみられる。出雲市大津町で拾った人が大切に保管しており、遺族が今年5月に松江市へ寄贈した▼長い戦争で国民は疲弊し、戦力も失われていたはずだが、昭和天皇の決断を知ってなお徹底抗戦を訴える内容だ。今年1月に亡くなった作家半藤一利さんは著書『日本のいちばん長い日』で、玉音放送を前に降伏阻止をもくろむ軍部を描いた。大社基地でも同様の動きがあったことを小さなビラは伝えている▼本紙の前身、島根新聞は1945年8月21日付1面で「陸海軍より各部隊へ注意」との見出しで、独断で軌道を外れた行動を取るな、と求めている▼ビラの後段に「国民ヨ!!幾多玉砕セル将兵ハ頑張リ抜イタ 沖縄県民ニ恥ジルコトナカレ」とあり、犠牲者のためにも敵に向かうべきだと説く。平和な時代から想像もできない、終戦を迎えられない人たちの心理を語る貴重な資料だ。基地跡と共に後世へ伝えたい。(釜)