1991年9月まで約26年にわたり、大手紙で連載された4こま漫画『フジ三太郎』は、庶民の感覚を映し出すサラリーマン漫画の先駆けとされる。同時に、記念日に合わせたネタを多用していたのも特徴だ▼例えば81年8月15日のタイトルは<終戦記念日のメニュー>。フジ家の朝食は「おカユまたはスイトン少し」(1こま目)、昼は「ぬき」(2こま目)で、晩は「イモまたはイモのツル」(3こま目)。そして4こま目は、おなかをすかせた子ども2人が「戦争反対」のプラカードを持って部屋の中をデモ行進。主人公の三太郎が「食べもので教えるのがいちばん」とつぶやく▼作者のサトウサンペイさんも戦時中、学徒動員で徴用され、高射砲用の弾丸製作に従事した。食料が乏しかった当時を振り返り、子どもたちに平和の尊さを認識させるには、戦時中の食事がいかに貧しかったかを体験させるのが一番効果的だと考えたのだろう▼とはいえ、この漫画が掲載されたのは40年前。世界で約7億人が飢餓に苦しむ半面、日本を含む先進国で大量の食べ物が捨てられている「飽食」の現代では、ぴんとこないかもしれない▼サトウさんが91歳で亡くなった。生前に「人間として大事なことを描いたつもり」と語っていたという。戦争のない平和な世界も、大事なことに含まれていただろう。きょうは76回目の終戦記念日。朝食は「おカユ」にしようか。(健)