鼠(ねずみ)小僧と言えば、大名屋敷に忍び込み大金を盗んで貧乏人に分け与える義賊イメージが伝わる。盗みはすれど貧民救済のために体を張ったヒーロー。しかし実際には運動神経の発達した、ただの盗賊だったらしい。「こうあったら格好いい」という庶民の期待を歌舞伎などで義賊譚(たん)に仕立て上げた▼大名屋敷がグーグルやアップルをはじめ「GAFA」に代表される巨大IT企業なら、ヒーローとしての鼠小僧はデジタル課税|。そんな例えが浮かんだ。日本を含む主要国が、巨大IT企業を対象に「大もうけしながら税逃れしている」として国際的な課税ルールを設けることで大枠合意した▼GAFAなどの税逃れを許しているのが「拠点なくして課税なし」という国際課税ルール。ネット通販などデジタルサービスで外国企業が日本でいくらもうけても工場や支店を置かなければ、日本は税金をかけることができない▼欧州委員会の調査では、一般企業の平均税負担率23%に対し、IT企業は9%。もうけは図体の大きい製造業が束になっても届かないのに、納める税金は究極のダイエットだ▼100年続く「見える実体」原則を改め、見えようが見えまいが、収益が発生したところで税金を払ってもらう。急成長するITサービスに応じて「属地主義」で税収を伸ばす仕組み。「こいつぁ、具合が良いわい」と見えを切る歌舞伎役者を想像してみた。(前)