大学時代、先生に教わった。「缶ビールにも鮮度がある。製造年月が新しいものを買え」と。それが通だと言わんばかりに。雑談だったが、それだけはしっかり覚えていて、以来、その教えを守り続けている▼缶飲料まで意識するかどうかはさておき、売り場では製造日が新しい、消費・賞味期限まで余裕がある商品を選ぶのが「賢い消費」だと思い込んできた。それが今はどうやら違うらしい▼社会や地球環境に配慮した消費行動を意味する「エシカル(倫理的)消費」。島根県の広報に、具体例として消費期限が近づいた食品を購入するとあった。気になって調べてみると、販売期限切れによる店側の売れ残り廃棄を減らすことにつながるという。コンビニなどで買ってすぐに食べる弁当やおにぎりは、商品棚の手前にある商品を選ぶ「てまえどり」のキャンペーンまであると知った▼できることから始めようと行動に移した消費者はどう受け止めただろう。先週閉幕した東京五輪で大会スタッフやボランティアに用意された弁当が大量に余り、処分されたことが物議を醸した。需要を見誤り、その数4千食とも、それ以上とも▼発注量が多い大イベントだけに防ぐのは難しかったのか。はたまた「持続可能性」を理念に掲げ、食品ロス削減を目指した大会でも結局は防げなかったと考えるべきか。古いビールを飲まされたような、後味の悪さが残る。(史)